
警察庁は、佐賀県警科学捜査研究所(科捜研)の元技術職員によるDNA型鑑定記録改ざんについて特別監察を実施しているが、その2回目の中間報告を2月12日公表した。これに対して、藤田義彦(藤田法科学研究所長・元大学教授)さんが、佐賀県弁護士会(会長:出口聡一郎)に提出した報告書(3月2日付)が、このほど公表された。
特別監察は昨年10月8日から、同庁刑事局刑事企画課や科学警察研究所(科警研)の幹部ら28人体制で実施。特別監察の目的は、①DNA型鑑定の実施体制とその実施状況の検証、②不適切事案の原因分析とそれを踏まえた再発防止策の2点である。確認作業は、佐賀県警が不適切とした130件をまず行い、その後、元職員が2017年6月以降、一人で担当した513件の鑑定についても確認するという方針の下で行われた。
第1回中間報告では、①については「捜査・公判への影響の有無」と元技術職員による「鑑定の実施状況」の2つの確認が進められているが、その途中経過が示された。
今回の中間報告では、前回の報告で確認中とされた鑑定不正について検証した結果、捜査への影響34件、公判への影響7件、身元確認など行政上の支障3件について、いずれも影響・支障はなかったと報告された。
A4判11頁に及ぶ藤田意見書は、警察庁による検証件数の正確性やその方法・判断についていずれも不正確・不適切として、捜査などへの影響が生じていると、厳しく批判する。
藤田さんは、第2回中間報告について、とくに検証の不十分な点の根本原因をつぎのように語った。
「2012年から約2年間、和歌山県警科捜研化学係研究員が交通事故における繊維・塗膜片の鑑定結果報告に、過去の鑑定資料のきれいな分析データの波形図を流用し書類の偽造などを行い、虚偽公文書作成・同行使で有罪となった。その裁判で職場環境にも問題があるとの指摘があったが、警察組織が真摯に対応しなかったため、今回、同様の不祥事案が発生した。従って、部内での監察だけでは全容を解明できず、根本的な改善は望めないため、第三者機関・委員会による検証が必須である」。
佐賀県警が同職員のDNA型鑑定不正を公表した2025年9月8日と同じ日、警察庁刑事局犯罪鑑識官は、「鑑定における不正を防止するための対策について(通達)」(令和7年9月8日付け警察庁丁鑑発第2220号)を、各都道府県警察(方面)本部長宛に出していた。第2回中間報告によると、これまでの確認結果では、この通達で指示した再発防止策により防止できないような事案は認められなかったとしている。
さらに、佐賀県警本部長は、上記警察庁通達を受けて、関係機関に対して「科学捜査研究所における鑑定実施等要領の制定について(通達)」と「科学捜査研究所におけるDNA型鑑定の実施における留意事項について(通達)」をそれぞれ出している。
藤田さんは、以上の鑑定不正の防止策に関する通達について、つぎのように述べた。
「私は31年間、県警科捜研で奉職したとき、良識のある上司(警察官)から真の科学者である鑑定人は、作為をしないことだと指導された。そして、日本犯罪学会の論文(「『法科学研究所』創設への提言——冤罪のない安全と安心の社会を目指して」犯罪学雑誌81巻1号〔2015年〕3〜15頁)で真の法科学鑑定のあり方を提唱し、警鐘を鳴らしてきた。その中で『(いつの時代も、科学を駆使して)社会貢献を目的とする科学者は(良心に従い、謙虚に、忠実に鑑定資料と対峙し)、目先の自己利益(のためだけの評価)を期待せず、真の社会正義を貫き、冤罪のない、安全と安心の社会を目指すことが、日本の繁栄に繋がる』と訴えたが、その点で今回の中間報告書では不十分であると言わざるを得ない。最終報告書でどのような提案がなされるのか注目したい」。
警察庁は今後、佐賀県警が問題としなかったほかの鑑定513件も含めさらに確認を進め、特別監察の最終結果を公表する予定である。
【佐賀県警DNA型鑑定不正の動き】は以下を参照(編集部)
・科捜研の元所長補佐・藤田義彦さんが、警察庁の特別監察「中間報告」に対する意見書で、「冤罪の検証に実績のある専門家の意見を求めるべき」だと表明
・科捜研の元所長補佐・藤田義彦さんが、佐賀県弁護士会に対する意見書で、「第三者委員会の設置と再検証」を求める
・平岡義博元科捜研主席研究員はどう見るか
(2026年03月31日公開)