再審法改正/衆議院本会議で可決、村山浩昭元裁判官らが、内閣提出法案に意見書を提出


再審法改正の政府案が衆議院本会議で可決されたことで、記者会見する元裁判官の村山浩昭弁護士(左端)、鴨志田祐美弁護士。リモートで参加された袴田ひで子さん(2026年6月16日、東京霞が関。写真撮影:刑事弁護オアシス編集部)

 衆議院本会議は、6月16日、再審制度を見直す「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」(第221回国会内閣提出法案第61号、以下「法案」)と自民党・日本維新の会・参政党提出の修正案を、自民党、日本維新の会、参政党の賛成多数で可決した。直ちに、参議院に送られた。法案の成立は、現在の与野党の勢力図からみて確実と見られている。焦点は、参議院の審議で、冤罪被害者や市民グループが支持している「野党3党による議連案」(衆議院で否決)にどれだけ近づくかである。

 同日午後、法制審議会―刑事法(再審法関係)部会の委員であった鴨志田祐美・村山浩昭各弁護士、同部会幹事の田岡直博弁護士が東京で記者会見を開いて、可決された法案と修正案に対する意見書を公表した。

 これに先立って、衆議院法務委員会で参考人として意見表明した、袴田巖さんの姉・ひで子さんが、リモートで挨拶した。

 「この法案では、(もしこの法案の下で再審請求していた場合)巖は救われないのではないか。もとに戻った感じがする。法案は冤罪被害者を救うことが目的です。そのことを参議院でも忘れないで欲しい。私たちはその点を監視していく必要があります」と訴えた。

 記者会見の冒頭で、鴨志田弁護士は、衆議院法務委員会での8回におよぶ審議と意見陳述の機会があたえられたことを感謝したあと、「法務委員会では、冤罪被害者の早期の救済という目的のために真摯な議論がなされた。そのことが、可決された法案や修正案に十分反映されたか疑問をもっています。そうした再審法改正政府案で足りない部分が参議院で修正されることを強く望む」と前置きした。そして、法案と修正案には検察官抗告の全面禁止がないなど多くの問題点があるが、証拠開示に限ってつぎの3点を指摘した。

 ① 法案には、証拠一覧表を再審請求人・弁護人に開示する規定がない。再審請求人・弁護人は再審請求にあたり、検察官が保管する証拠の全容を把握することができず、地図をもたずに山に分け入り、手探りで証拠という「鉱脈」を探すことになる。法案にある証拠の「標目の一覧」ではなく、通常審にある「証拠一覧表」(検察官保管証拠の一覧表)と同様の制度が再審でも必須である。

 ② 法案には、裁判所の職権による直接開示型の証拠開示制度がない。法案の証拠提出命令は、裁判所が証拠を取り調べるために裁判所に証拠を提出させる制度で、「関連性」と「必要性」が要件となっている。これは、再審請求人・弁護人が再審請求理由を基礎づける事実と証拠の存否を確認する目的の「主張・立証のための準備的行為」として必要な証拠開示の制度ではない。

 ③ 開示証拠の目的外使用禁止規定の目的は、被害者などの関係者の名誉・プライバシーを保護することにあるが、その必要があれば、一律に禁止するのではなく部分的な禁止の規定を設ければ事足りる。

 村山弁護士は、再審請求審にかかわった経験から、証拠開示制度について、それが再審請求人や弁護人にとって大きな武器になるよう、法案のように運用で解決するのではなく、条文で明確化する必要性とともに、つぎのように指摘した。

 「捜査機関が持っている証拠は、再審請求人や弁護人にとって必要性や関連性が高いものばかりである。法案のように裁判官だけに提出しても、その必要性や関連性は、弁護士に指摘されなければ裁判官は判断できない。この点を参議院でも議論して欲しい」。

 同日、再審法改正をめざす市民の会も、参議院での徹底した審議を求める声明「カラ手形(政府案)では、再審への道は開かない。参議院で徹底審議し『冤罪犠牲者を救うための再審法』への修正・成立を!」を公表した。

 法案審議の舞台は、参議院に移った。再審法改正の目的は、いうまでもなく冤罪被害者の早期救済にある。そのことを忘れずに審議することが望まれる。良識の府としての参議院の意義が試されるときでもある。刑訴法施行以来はじめての再審法改正で、将来に禍根を残さないためにも、私たちもまた、審議を注目していきたい。

(2026年06月17日公開)


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